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初めて「先輩」「後輩」という上下関係を学ぶのは中学校からという人がほとんどかと思います。
上下関係を学んでいくうちに、目上の人には敬語を使うようになり、いずれ社会に出てからはほとんどの場面で敬語を用いて話すようになります。
その敬語の使い方、一つ間違うと反対に相手に無礼を働くことにもなりかねません。
ではどういったことに気をつければよいのでしょうか。
「敬語の使い方」と密接に関係している四字熟語の中に「慇懃無礼」があります。
一体どういったことを意味しているのでしょうか。
この記事では、「慇懃無礼」の意味や語源、英語・類義語表現や例文による使い方をご紹介します。
「慇懃無礼」の意味と語源
まず最初に、「慇懃無礼」の意味と語源をご紹介していきます。
「慇懃無礼」という言葉の中でも特に難しいのが前半2文字「慇懃」ですよね。
まず初めに、読み方から学んでいきましょう。
慇懃無礼の読み方と意味
「慇懃無礼」とは「いんぎんぶれい」と読みます。
「慇懃無礼」とは、「あからさまに丁寧すぎると、かえってそれが無礼な態度になってしまう」「表面上では非常に丁寧に取り繕っていても、内面では相手を見下していること」という意味になります。
皆さんの周りにもいませんか?
「大変申し訳ございませんでした。」と言いながら実は全然内心ではそう思ってなさそうな人。
まさにそういう場合「あの人慇懃無礼な態度だったよね…」という表現がうってつけだということになります。
「慇懃無礼」が蔓延している場面って結構日常的にあって、私も良く出くわします。
先日なんかはホテルのフロントの対応でクレームを言っている宿泊客に対して「すぐに改善させて頂きます、貴重なご意見を頂戴し、誠にありがとうございます」なんて言っている場面。
このような場面も、そのクレームを起こした本人じゃない人が対応していたりすると、対応しているスタッフは「何で私が…」という気持ちになっていたようなんです。
そうなるといくらクレームを言ってきた相手に対して「ありがとうございます」と言っていた場合でも、おそらくその宿泊客に大して本音では感謝していませんよね。
これがまさに「慇懃無礼」の最たる例と言えます。
また私も「慇懃無礼」な態度にならないように注意するようにもしています。
例えばなんでもかんでも「~させて頂きます」というように、不必要に丁寧な敬語を使ってしまうと逆に相手には「なんか違和感があるな…本当はそんなこと思ってないんじゃないの?」なんて思われてしまうかもしれません。せっかくの敬語も逆効果ですよね。
言葉上いくら丁寧な表現をされたとしても、そこに本心がなければ結局不快に感じたり、場合によっては腹立たしく感じたりするでしょう。この場合がまさに「慇懃無礼」だというわけです。
「慇懃無礼」の語源
次に、「慇懃無礼」の語源について見ていきましょう。
もともとは「慇懃」も「無礼」も別々に使われることが多い言葉です。
「無礼」という言葉は「礼儀が無い」ということで、敬意を示すべき相手なのに礼儀を払わないことを示します。
次に「慇懃」について、「慇」という字は「丁寧な」という意味で、「懃」は現代の漢字の中で言うと「勤」すなわち疲れるほどに気を遣う様子を示しています。
この「慇」と「懃」の2つが連なったおかげで、ただ単に丁寧であるという以上に「非常に(必要以上に)丁寧な」というニュアンスが生まれるというわけです。
この「慇懃」と「無礼」という独立した相反する言葉が組み合わさったことによって、「慇懃無礼」という言葉が生まれたのですね。
「慇懃無礼」の英語・類義語
では、「慇懃無礼」の英語での表現や類義語についてご紹介していきます。
「慇懃無礼」の英語表現
まず、「慇懃無礼」の英語表現をご紹介します。
単語では、こちらの2つが近い意味を持っていますね。
- smarmy(丁寧すぎる)
- saracastic(嫌味、皮肉)
「慇懃無礼」を英語で説明すると、以下のようになります。
- be polite on the surface but actually look down on ~
「表面上は礼儀正しいが実際は~を見下している」ということになります。
「慇懃無礼」の類義語
続いて、「慇懃無礼」の類義語をご紹介していきます。
- 慇懃尾籠(いんぎんびろう)
- 口先の裃(くちさきのかみしも)
- 馬鹿慇懃(ばかいんぎん)
「慇懃尾籠」の「尾籠」という言葉になじみがないかもしれませんが、実は「無礼な」「礼儀をわきまえていない」という意味です。
共通して「慇懃」という言葉も使われているので、「慇懃無礼」と同義語といえますね。
「口先の裃」とは、言葉遣いだけは丁寧だけれども実は腹黒い様子を表しています。
表面だけ取り繕っている場合に使える四字熟語です。
「馬鹿慇懃」とは「馬鹿丁寧」ということです。ちょっと馴染みが湧いてきますね。
「慇懃無礼」の使い方
それでは、例文とともに「慇懃無礼」の使い方を学んでいきましょう。
【例文】
- 「あの人と話すと、いくら敬語を使われても端々に嫌味を感じるんだよ。慇懃無礼な人だ。」
- 「あの取引先は慇懃無礼にもほどがある。失礼極まりない。」
- 「折角引っ越しの挨拶をしに行ったのに、慇懃無礼な態度で断られて傷ついたよ…」
- 「先輩に、「おまえの今の言葉遣いは慇懃無礼と捉えられてもおかしくないぞ」と注意された。そんなつもりじゃなかったけど注意しなくてはいけないな」
- 「あの人に対しては、これまでの仕打ちを思うとどうしても慇懃無礼な態度をとってしまう。失礼なこととはわかっていてもこれまで大変な思いをさせられたから普通には接せないんだよ…」
このように、相手の無礼をとがめる場合に使われる言葉です。
ポイントは、礼を尽くしすぎてかえって無礼になるという意味があることなので、使いやすいシチュエーションとしては、目上の人、取引先の人に対して無礼や不作法を知らず知らずのうちにとってしまった、という場合がいいでしょう。
使いやすい場面から、まずは挑戦していきましょう。
「慇懃無礼」なことばかりしていると「罵詈雑言」なことを言われかねません。
「罵詈雑言」の記事はこちらをご覧ください。
自分の思いとは裏腹に
自分にそんなつもりはなくても実は相手に不快な思いをさせてしまうこと、ありますよね。
特に敬語の使い方については、むやみやたらに並べたてるだけではかえって相手を侮辱していることにもなりかねません。
丁寧に接しているつもりでも、不快にさせてしまっては身も蓋もありませんね。
相手とよりよい関係を築くためにも、言葉遣いってとても大事なこと。
特に新しく人と出会う場合には、まず最初に相手を知ることから始めると良いでしょう。
きっと最適な言葉遣いを選ぶことができ、知らないうちに失礼なことをしてしまった、というようなこともなくなりますよ。
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